index
施設の統廃合は地域をこわす
公共施設の再編問題を学ぶー市会議員 梶原秀明・宮下奈美

 4月16日、さいたま市のときわ会館で行われた地方自治フォーラムの「人口減少と地域、公共施設の再編」について報告します。講演は奈良女子大大学院の中山徹教授です。
 中山氏は自治体政策を専門とし、大阪では市民運動に積極的に参加され、その知見から、これまでの国土計画の変遷に言及します。かつての計画は、国土全体が均衡に発展することをめざしてきたが、アベノミクス(安倍政権の経済政策)のもとでは、初めて首都圏の強化を打ち出したとして、首都からはずれる地方都市や農山村は、人口が急減しても生き残れるための再編成を政府は進めていると述べます。その施策の一つが「立地適正化」で、人口減に応じて市街地を縮小し、効率的に施策を展開し、新たな活性化につなげることを狙います。しかし、公費で引越し費用を出すのではもちろんなく、住居を市街地に誘導することはきわめて困難であり、連携中枢都市圏構想同様に、その効果は未知数だとしました。
 後半のテーマは、蕨市でも3月に策定した公共施設等総合管理計画です。2013年6月の日本再興戦略では施設の長寿命化がめざされていたが14年4月の「公共施設等総合管理計画指針」では、施設の統廃合と民営化に重点がシフトしていると指摘。公共施設削減型自治体(さいたま市を例示)と、長寿命型自治体(川崎市を例示)に分かれていると分析しました。最後に中山氏は、施設の統廃合は地域を壊すとし、公共施設は長寿命化が基本だと述べ、愛知県が施設の寿命を35年から65年にしている例などを示し、そのために損傷が軽微な段階で予防的な修繕を行うこと、新たな施設を造る際は維持管理が容易な計画を作ること、地元建設業の維持管理力を高めていくことなどを提言しました。
 いま蕨市では、30年から50年先を見すえた施設計画を立てつつある段階であり、市庁舎の検討審議会が始まるこの段階で、大変参考になる講演内容でした。市庁舎審議会については、日本共産党から山脇市議が委員として参加しますが、市議団としては、市庁舎の他、道路・下水道などのインフラも含め、施設の今後のあり方を市民とともに考えていく所存です。