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蕨の借金はどうなっているか - 蕨市財政を考える(2)

前回は、経常収支比率を取り上げ、市の財政に余裕があまりない実態、その原因が、戸田競艇からの収入の激減と、国の三位一体改革にあることを見ました。

蕨市の財政は平成8年頃まで戸田競艇収入に大きく依存してきたと言えます。3年に貨物駅跡地のうち7427uを59億5千万円で蕨市土地開発公社が購入、市は公社の債務を保証します。5年には、公社の土地を買い戻すために36億1千万円の市債を発行、跡地の約61%、4506uを購入します(グラフ参照)。グラフで5年の地方債発行高が突出しているのはそのためです。6年には総合社会福祉センター(錦町)の建設のため、9億円の市債を発行。9年度末の地方債残高(一般会計と市街地再開発会計、土地区画整理会計などを合算した、普通会計ベース)は約153億円とピークになります。
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そして、戸田競艇収入が激減し影響が深刻になる平成11年を迎えます。この頃には、市政運営に大きな転換が必要でした。しかし前市長の市政はこの頃、駅前市街地再開発を3工区に分ける案を具体化し推進していきます。学校校舎を含む公共施設の耐震化や大規模修繕、錦町区画整理などの優先度は低くされ、国の圧力もあり土地開発公社の健全化計画の実行とも合わせ、13年度20億円強、14年度25億円強、15年度30億円と市債発行を増やし、16年度164億円と借金残高は蕨市史上最大になります。その後徐々に借金残高は減り、頼高市政では今年度(21年度)146億円程度まで減る見込みです。

地方債の返済額がその自治体にとってどの程度か、重くないか、を示す指標に、実質公債費比率というのががあります。一般家庭での、年収に占める借金返済額のようなものです。蕨市は19年度決算で6・9%。人口や産業構造が蕨市と似ている類似市56市の平均は10・8%、蕨市は56市のうち健全な方から数えて12位です。さらには、市民1人当たりの地方債残高は同じく15位(いずれも普通会計決算)。これらから、蕨市の借金状況は健全だと言えるでしょう。

自治体の4大財源は、市税、国の支出金、地方交付税、地方債です。言うまでもなく、自治体の借金(地方債)は市の収入として重要です。地方債は、それによって建設される公共施設などの便益を後年の市民が受けることから、その負担は後年の市民がするという意義があり、地方債発行の根拠となります。学校校舎耐震化や浸水対策の調整池の建設に、地方債による収入があてられるのは正当なことです。したがって来年度以降も蕨市の借金を減らし続けるのか、それとも、公共施設改修などのために大きな借金をするのかは、市の施政方針と、議会をはじめとする議論によるでしょう。

今後の市政運営には、借金(地方債)を含め、限られた財源を市民サービスにどう優先度を付けて配分するのか、新たな財源の確保、支出の節約、不要不急の事業の中止・抑制が求められます。そのための議論を、市議会だけにさせないで、議会をいっそう開かれたものとするとともに、市民参加で市政と財政を考えることも大切です。私たちのまちをどうするのか、市民自らが考え意見表明することこそ、地方自治・住民自治だからです。(つづく)