市発行の「合併するとこうなります!概要版」の問題点

 市が全戸配布したパンフレット「合併するとこうなります!概要版」は、ほとんどすべてのサービスや福祉が向上するような記述になっていますが、合併のデメリットがまったく説明されていないなど、たくさんの問題点があります。
 第一に、合併時はそれぞれの事業を継続し、合併後に統一をはかるというものがいくつも出てきますが、それらは蕨市民にとって負担増となったり、サービスの低下になる恐れが強いということです。
 第二に、川口市が実施していないものを蕨市に合わせて実施すると莫大なお金がかかり(例えば乳幼児医療費助成制度は約8億円の事業費が増える)、すべてを持続させることは無理です(大規模開発を行なわずに福祉重視を貫けば持続出来るかも分かりませんが、新市建設計画は再開発などを進めていくことになっています)が、その点にまったく触れていません。
 第三に、埼玉高速鉄道について経営の安定化を図るため、出資・補助・貸付等を新市に引き継ぐとなっていますが、どれだけの負担になるか書いていません。新聞報道では、2003年度から09年度までに川口市61億2千万円、鳩ヶ谷市20億4千万円の負担と書かれています。これがさらに膨らむ可能性もあり、蕨市民は余計な借金を共同で背負うことになります。
 第四に、コミュニティバスの運行等は現状通り(運賃は川口市・鳩ヶ谷市に統一)となっていますが、蕨市の利便性の高さがきわだっています(蕨市は来年1月から3台、川口市は6台、鳩ヶ谷市は2台)。こうした利便性の高さは、公民館の設置数にも見られますが、新市になれば徐々に平均化されていくでしょう。
 この他、様々なデメリットについての記述がなく、合併して10年目以降の財源の裏付けがないのにサービスを向上させると言うのは市民に誤解を与えます。合併して使えるお金が増えるのは、合併特例債という借金が5百億円(そのうちの7割は返済時に地方交付税で補填)できるというのが中心ですが、それは10年間に限ってであり、その後は膨らんだ借金の返済と、合併によって地方交付税が減らされる(年間30億円程度と予測されている)ことのダブルパンチで、サービスの維持ができなくなるのが目に見えています。市長・議員・職員を減らすことはできますが、その分地方交付税も減ります(それが国が合併を押しつける大きな理由です)のでプラスにはなりません。
 合併すれば5百億円の借金ができるということに目を奪われては、あとが大変です。


蕨市に合わせることによる事業費の増加額
乳幼児医療費助成 約8億2000万円
障害者福祉手当 3億5000万円
福祉入浴事業 1億9400万円
敬老祝金 1億5000万円
市民葬 1億3800万円
高齢者等家賃助成 1億2200万円

埼玉高速鉄道への財政支援計画
  負担割合 出資 補助金 合計
川口市 3/15 45億6千万円 15億6千万円 61億2千万円
鳩ヶ谷市 1/15 15億2千万円 5億2千万円 20億4千万円
両市の場合 4/15 60億8千万円 20億8千万円 81億6千万円